カーボンオフセットと炭素会計に関する政府見解

(1)政府懇談会提言

カーボンオフセットや炭素会計のルールづくり

具体的には、例えば、消費者に選択する手段を提供するためには、「見える化」を進めるためのしくみづくりをしなければならない。カーボンフットプリント、カーボンオフセットや炭素会計のルールづくりを急ぐべきである。加えて、予算措置や、インセンティブ減税、規制などの手法も駆使して、省エネ家電や、次世代自動車、省エネ住宅、ヒートポンプ、太陽光発電など、CO2 を大きく削減できる製品やサービス、再生可能エネルギーの普及を強力に後押ししていかねばならない。

国自らが、太陽光など再生可能エネルギーの積極的な導入や省エネ、さらにはカーボンオフセットなどで率先実施をすることも必要である。
さらに、世界の国々が排出削減に取り組むよう、国際交渉でリーダーシップを発揮することも求められている。

カーボンオフセットや炭素会計の取組について、事業者や国民の理解を広め、幅広い普及を図る。

■目指すべき姿

<カーボンオフセット>

市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等がカーボンオフセットに取り組む機会を提供する。同時に、温室効果ガスの排出がコストであるという認識を経済社会に組み込むことで、気候変動リスクを低減する低炭素社会のバックボーンを形成する。

<炭素会計>

事業者や国民による環境情報の利用の促進が図られ、温室効果ガスの排出削減などの環境に配慮した事業活動が社会や市場から高く評価されるようになる。

カーボンオフセット及び炭素会計のルールづくりを行うとともに、その普及を図る。

■基本方針

<カーボンオフセット>

市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等に対し、広くカーボンオフセットの取組に関する理解を広めるとともに、カーボンオフセットの取組に対する信頼性を構築することにより、取組の普及促進を図るため、主に以下の取組を行う。

柔軟かつ多様な形でカーボンオフセットの取組が行えるようにするため、カーボンオフセットの類型ごとにどんな活動がオフセットの対象になりうるのか、多くの具体的な事例を示す。

政府として VER の認証を支援するため、カーボンオフセットに用いられる排出削減・吸収量(クレジット)に関する、第三者機関による認証・検証基準等を策定する。

カーボンオフセットの対象となる活動から生じる排出量の算定方法について、基本的かつ簡易な手法を提示する。

情報公開により取組に係る透明性を高めること、カーボンオフセットを実現する商品、サービス等を購入する消費者に対し十分な説明がなされること等を確保するため、カーボンオフセットの取組に関する透明性の確保に関する基準等を策定する。

米国、欧州等の事例も参考にしつつ、カーボンオフセットの取組に関する一定の基準を満たしていること等に関する認定基準、第三者機関による認定を受けたことを示すラベリングについて策定する。

木材・木質バイオマスが有する環境面等の優位性の明確化(「見える化」)と、これを消費者の消費行動や企業活動等に反映させる仕組み(カーボンオフセット等)を構築。

農山漁村地域に附存する木材・木質バイオマス等の資源・エネルギーを有効活用したCO2 排出削減をカーボンオフセット等の取組を通じて、CO2 を排出している国民、企業等の幅広い参画も得ながら社会全体で CO2 排出削減を進める枠組づくりを推進。

森林吸収量を活用した「国内森林 CDM」制度によるオフセット等を通じて山村地域の活性化を図る仕組みを構築。

カーボンオフセットに関係する国内の既存の諸制度や取組との整合性を21年度に検討。

<炭素会計>

事業活動に伴って排出する温室効果ガスに係る情報に関し、炭素会計の考え方などを用いて企業経営との関係を示すことを含め、わかりやすく示すことができるように方法を示していく。

 

(2)環境省

<カーボンオフセット>

『我が国におけるカーボンオフセットのあり方について(指針)』では、カーボンオフセットに用いられるクレジットとして、京都クレジットJVETSの排出枠に加え、①削減・吸収の確実性、②削減・吸収の永続性、③ダブルカウントがないこと等の一定の基準を満たしているVER(Verified Emission Reduction)をあげている。このVERのあり方やその検証・認証、VERの信頼性を確保するための仕組み等につき、試行的に認証を行いつつ検討を進める。

前年度までの検討結果および施行事業による知見や経験を活かし、VER認証・登録スキームの運営を行うとともに、認証事業を実施する。また、ラベリングスキーム運営等を通じてカーボンオフセットの取組に対する信頼性を担保する等、カーボンオフセットの取組を支援する。

(カーボンオフセットフォーラム運営)
・セミナーの開催、他のセミナーへの出展、環境省指針及び関連する基準、ガイドライン等の解説
・J-COFに設置したヘルプデスクを通じたカーボンオフセットの取組を行う市民、企業、地方自治体等に対する相談支援
・ウェブサイト等を通じたカーボンオフセットに関する国内外の民間事業者による取組や政府の動向等に関する情報提供

来年度以降に実施するもの

(VER認証・登録スキーム運営)
・J-COFにおいてVERを生む国内排出削減・吸収プロジェクトのベースライン・モニタリング方法論を認定又は策定・提供
・認定したVERのベースライン・モニタリング方法論について、カーボンオフセットを実施する事業者に対して提供するとともに、VER方法論を活用するに当たっての手引きを策定・提供
・国内の排出削減・吸収プロジェクトから生ずる排出削減・吸収量に対し、VERを発行
・オフセットを行うための排出削減・吸収量が複数の排出量のオフセットに用いられること(ダブルカウント)を防止するため、発行されたVERを管理しオフセットの際に無効化することを確認する登録簿を整備し、VERの移転、無効化等を管理

(VER認証事業)
・オフセットに用いる排出削減・吸収を確実にするため、様々な国内排出削減・吸収プロジェクトの実施によるVERの認証業務を行う
(カーボンオフセットモデル事業計画設計調査及びカーボンオフセットに関する認定試行事業)
・様々な事業分野でのカーボンオフセットの取組を一層促進するため、事業者が考案したカーボンオフセットモデル事業計画を採択するとともに、有識者からの指摘を踏まえてよりよい事業計画を策定してもらい、ノウハウを広く共有することで、カーボンオフセットの取組の普及促進を図る。
・また、事業の実施により生まれるカーボンオフセット型の商品・サービス、会議・イベント等に対して認定試行事業を行うことにより、そのノウハウを広く共有し、カーボンオフセットの取組の質を高める。

(カーボンオフセットの取組に関するラベリングスキーム運営事業)
・カーボンオフセットの取組に関する一定の手続が適切に実施されているかを第三者機関が審査し、基準に適合する商品・サービス、会議・イベント等についてラベリングを行うとともに、ラベリングの管理事業を実施

<炭素会計>

炭素会計の考え方について調査研究するとともに、炭素会計の活用を含め、投資、製品等の利用その他の行為をするに当たって温室効果ガスの排出に関する情報を利用する事業者、国民等に対して事業者から適切に提供する方法について、関連する事業者、有識者等からなる検討会において調査・検討する。
その際、環境報告書、環境会計の有効活用等についても検討していく。

20年度における調査・検討を踏まえつつ、炭素会計の考え方の活用を含め、適切な情報提供を促進するための措置を実施する。

 

(3)経済産業省

<カーボンオフセット>

平成20年度「国民運動支援ビジネス推進事業」において、地域ぐるみで行うカーボンオフセットを活用したビジネスを採択し、CO2削減クレジット取引、CO2算定方法、認証・仲介方法等の地域ベースでのルールづくりを支援。

平成20年6月に立ち上げた「カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会」において、カーボン・フットプリントのCO2算定方法等のルールづくりの検討を行っているが、製品・サービスのCO2排出量表示とカーボンオフセットとの関係を整理。

国内クレジット(CDM)制度を今秋に創設するとともに、国内CDMクレジットを活用したカーボンオフセット等、国内CDM制度の多様な活用法について検討・促進。

「京都クレジット流通基盤整備検討委員会」を立ち上げ、平成19年11月から平成20年6月にかけて京都クレジットを通じたカーボンオフセットに関する分析を行い、会計上の取扱い等を整理。

「国民運動支援ビジネス推進事業」の平成21年度予算の拡充を検討し、カーボンオフセットに係る地域ベースでのルールづくりのより一層の展開を図る。
カーボン・フットプリントの試行的実験を推進(必要に応じ、CO2排出量表示のカーボンオフセットへの応用を含む)。

国内CDMクレジットを活用したカーボンオフセット等、国内CDMクレジットの多様な活用を促進。

カーボンオフセットについて、国民運動支援ビジネスやカーボン・フットプリント、国内CDM、京都クレジットなどの国内の既存の諸制度や取組との整合性を検討。

<炭素会計>

平成20年6月に立ち上げた「金融市場における「環境力」評価手法研究会」において、企業の情報開示のあり方の検討を行っているが、その一環として、事業活動におけるCO2排出量・削減量の情報開示を行う炭素会計の実施方法・ルールを検討。

平成18年度以降実施している製品グリーンパフォーマンス高度化推進事業において、企業が炭素会計に取組む基盤を構築する観点も踏まえつつ、企業へのLCA(ライフサイクルアセスメント)の普及促進等を行う。

20年度の取組結果を踏まえ、更なる取組を推進。

 

(4)農林水産省

・20年度の検討を踏まえて木材分野のカーボンオフセットの具体的な仕組みづくりを推進。
・22年度以降、21年度の試行結果を踏まえて本格的に実施することを検討。

 


我が国におけるカーボンオフセットのあり方について(指針)概要

2008年2月7日、環境省は「我が国におけるカーボンオフセットのあり方について(指針)」を公表しました。欧米諸国で急速な広がりを見せているカーボンオフセットの取り組みを、今後国内でも推進していく上での考え方や方向性の大枠を示したものです。結果として民間のカーボンオフセット関連事業者にも広く門戸を開く方針となっていますが、カーボンオフセットそのものの信頼性を確保し健全な市場を育成するために、基準作りや基盤整備については公的機関が今後検討・策定することとしています。

(1)カーボンオフセットの背景

カーボンオフセットとは、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府などの社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(以下「クレジット」という)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部または一部を埋め合わせることを言う。

このカーボンオフセットの取り組みは、英国をはじめEU,米国、豪州等での取り組みが活発であり、我が国でも民間での取り組みが始まりつつある。

この取り組みを推進する第一の意義は、あらゆる社会の構成員が地球温暖化問題を「自分ごと」として捕らえ、主体的に温室効果ガス削減活動を行うことを推進することである。まず自らの排出量を「見える化」し、「自分ごと」との認識を促すことで、ライフスタイルや事業活動の低炭素化に向けた主体的な取り組みへのきっかけとなる。

第二の意義は、国内外の排出削減・吸収を実現するプロジェクト、活動等の資金調達に貢献することである。特に途上国においては、大気汚染、水質汚濁、廃棄物管理といった公害問題や、森林、生物多様性等の自然資源の劣化が深刻化しており、化石燃料使用の削減やごみの適正な処理や植林などのプロジェクトは、公害問題・自然資源の改善と温室効果ガスの排出削減といった二つの効果を同時に実現することができる。このようなプロジェクトは、ニーズが高いものの現状では十分にファイナンスされていない。

(2)カーボンオフセットの基本ステップ

1.自らの行動に伴う温室効果ガスの排出量の認識
2.市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等による排出削減努力の実施
3.1.2.によっても避けられない排出量の把握
4.上記3の排出量の全部又は一部に相当する量を他の場所における排出削減量・吸収量によって埋め合わせ(オフセット)

(3)カーボンオフセットの主な種類

1.市場を通じて第三者に流通するクレジットを活用したカーボンオフセット(市場流通型)
  
 1.商品使用・サービス利用オフセット
   商品やサービス利用により排出される温室効果ガスを、商品・サービスと併せてクレジットを購入することでオフセットする。
 2.会議・イベント等オフセット
   会議やコンサート、スポーツ大会等の開催にともなって排出される温室効果ガスをオフセットする。
 3.自己活動オフセット
   自らの活動に伴って排出される温室効果ガス排出量をオフセットする。

2.市場を通さずに特定者間のみで実施されるカーボンオフセット(特定者間完結型)
  
市場に流通するクレジットの購入ではなく、別途に排出削減・吸収活動を行ったり、排出削減・吸収活動から直接クレジットを購入しオフセットする。

(4)カーボンオフセットに用いられる排出削減・吸収量(クレジット)

カーボンオフセットの取り組みに対する信頼性を構築するため、

  1.確実な排出削減・吸収があること
  2.温室効果ガスの吸収の場合その永続性が確保されていること
  3.同一の排出削減・吸収が複数のカーボンオフセットの取り組みに用いられていないこと等

一定の基準を満たしていることが求められる。またこの基準を満たしていることを確保するために、第三者機関による検証が行われていることが必要ある。またそれら第三者機関の能力等について、公的機関が確認する仕組みが必要である。

上記の基準を満たすクレジットとしては、京都メカニズムクレジット、環境省が実施している自主参加型国内排出量取引(以下「JVETS」という)で用いられる排出枠があげられるが、これ以外にも上記の一定の基準を満たすVER(Verified Emission Reduction)等のクレジットがあれば用いることができる。これら一定の基準については、公的機関が検討・策定する必要があるが、その際は米国、欧州等のVERに関するさまざまな基準も参考になる。

(5)クレジットの管理

カーボンオフセットに用いられる同一のクレジットが、複数のカーボンオフセットの取り組みに用いられないことを確保するための管理基盤が必要である。例えば京都メカニズムクレジットは国別登録簿によって同一番号のクレジットの二重記録などを防止しており、我が国のJVETSや海外のVERについても、同様の電子システム整備が進められている。

(6)オフセットの手続き

オフセットに用いられたクレジットは、管理されたシステム上で無効化(償却又は取消)する必要がある。もし京都クレジットを用いて、京都議定書による日本の削減約束の観点から排出量をオフセットする場合は、国別登録簿上で償却することとなる。

またオフセットの対象となる活動からの排出があってから又はオフセットを実現するサービス・商品が購入されてから一定期間内に実際にクレジットを無効化し、カーボンオフセットを実現する必要がある。この期間については取り組み形態によって異なるが、現時点で国内で流通しているクレジットの量が限定的であるため、当面は遅くとも半年から一年以内にオフセットを実現することが望ましい。

今後は公的機関がこれらの基盤整備を進めていくと共に、オフセットの基準や第三者認定については、米国・欧州等の事例を参考にして策定していく。また上記の指針は主に、類型①の市場に流通するタイプのクレジットに適用され、類型②の特定者間完結型については、より柔軟に運用するとができるとしている。例えば排出削減・吸収量について、地域の有識者等の第三者が確認する手法についても、今後公的機関が具体的な事例を示すこととしている。

これらの基準、認定システム等については、速やかに検討の後、パブリックコメント等意見募集の手続きを経て公表することとする。


【参考】リンク集

環境省 地球環境・国際環境協力
環境省 カーボンオフセットに係る透明性の確保、第三者認定及びラベリングに関するワークショップ
経済産業省 地球環境対策
農林水産省 環境バイオマス政策
環境コベネフィット型CDMと海外植林 グリーンプラス


NPO日本カーボンオフセット推進機構
〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-17-16-203
電話:070-5011-6999
お問い合せ:info@carbon-free.jp


【参考】カーボンオフセットに関する用語集 (環境省指針より)

オフセット・プロバイダー
市民、企業等がカーボンオフセットを実施する際に必要なクレジットの提供及びカーボンオフセットの取組を支援又は取組の一部を実施するサービスを行う事業者をいう。

温室効果ガス
地球の大気に蓄積されると気候変動をもたらす物質として気候変動枠組条約に規定された物質。
二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(一酸化二窒素/N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)および六フッ化硫黄(SF6)の6つを指す。

温室効果ガスの排出削減・吸収量(クレジット)
温室効果ガスの排出を削減又は吸収するプロジェクトによって実現された排出削減・吸収量。第三者機関によってその排出削減・吸収量が認証されているものとそうでないものがある。一般的に、何らかの排出量取引制度に基づいて発行される排出枠とあわせて「クレジット」と総称される。

温室効果ガス排出量の「見える化」
食品のカロリー表示のように、どのような行為からどれくらいの温室効果ガスが排出されるのかを数量で具体的に表示することによって「見える化」し、市民、企業等が自らの排出量を把握しやすくすることをいう。

カーボン・ニュートラル(炭素中立)
市民の日常生活、企業の事業活動といった排出活動からの温室効果ガスの排出量と、当該市民、企業等が他の場所で実現した排出削減・吸収量がイコールである状態のことをカーボン・ニュートラル(炭素中立)という。カーボンオフセットは、市民の日常生活や企業の事業活動におけるカーボン・ニュートラルを実現するための手段であり、排出量を全量オフセットされた状態がカーボン・ニュートラルとなる。

カーボン・マイナス
市民の日常生活や企業の事業活動により生じる温室効果ガス排出量に対して、当該市民、企業等が他の場所で実現した排出削減・吸収プロジェクトによる排出削減・吸収量、購入したクレジット量等の合計が上回っている状態をいう。

バウンダリ
カーボンオフセットにより埋め合わせる対象となる活動の範囲をいう。カーボンオフセットを行うに当たっては、どの範囲の行為・活動からの排出量を埋め合わせるのかを決定し、その排出量を算定する必要がある。例えば、会議・イベントの排出量を算定する場合、主催者側の活動のみを算定の対象とするのか、参加者が目的地まで移動する際の排出量まで含めるのか等を事前に決めないと、当該会議・イベントからの排出量を埋め合わせるのにどれくらいの量のクレジットの購入等が必要かが決まらないことになる。

管理簿(レジストリ)
クレジットの発行、保有、移転等を正確に管理するために電子システムにより整備する管理台帳をいう。例えば、国際的に流通する京都メカニズムクレジットは、京都議定書に基づいて加盟国等が整備する電子システムである国別登録簿によって同一番号の京都メカニズムクレジットの二重記録等を防止している。

京都議定書で約束した6%削減目標
気候変動枠組条約は、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とし、地球温暖化がもたらすさまざまな悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めた条約(1994年3月発効)であり、1997年12月に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)」において京都議定書が採択された(2005年2月16日に発効)。京都議定書は、二酸化炭素(CO2)など6種類の温室効果ガスについての排出削減義務などを定めた議定書のことであり、1990年を基準年として温室効果ガスを先進国全体で5.2%削減することを義務づけるとともに、CDM( Clean DevelopmentMechanism : クリーン開発メカニズム) やJI ( JointImplementation:共同実施)、排出量取引からなる京都メカニズムという仕組みも導入された。この京都議定書において、日本を始めとする先進各国は、第1約束期間(2008〜2012年)における温室効果ガスの累積排出総量を一定量以下に抑えなければならないことが規定された。日本は、第一約束期間中の累積排出総量を、基準年(1990年)排出量から6%を減じた94%を1年分とし、それを5倍(5年分)した量以下にしなければならない。

京都メカニズム
京都議定書に定められる排出削減目標を達成するに当たり、自国内での排出削減以外の目標達成手段を用意することによって目標達成手法に柔軟性を持たせるため、京都議定書に規定されたメカニズム。クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism:CDM)、共同実施(Joint Implementation:JI)、国際排出量取引(International Emissions Trading)の3つを指す。

京都メカニズムクレジット
京都議定書に定められる手続に基づいて発行されるクレジットをいう。この京都メカニズムクレジットは、京都議定書に基づく削減目標達成のために用いられるものであり、
1.各国の割り当てられるクレジット(Assigned Amount Unit,AAU)
2.共同実施(Joint Implementation,JI)プロジェクトにより発行されるクレジット(Emission Reduction Unit, ERU)
3.クリーン開発メカニズム(CDM)プロジェクトにより発行されるクレジット(Certified Emission Reduction, CER)
4.国内吸収源活動によって発行されるクレジット(Removal Unit, RMU)
の4種類がある。

国別登録簿
地球温暖化対策推進法に基づき、日本政府(環境省及び経済産業省)が整備する、京都メカニズムクレジットを管理する電子システムをいう。京都議定書附属書Ⅰ国はすべて、この国別登録簿を作成、維持することが義務づけられている。具体的には、この国別登録簿上で、京都メカニズムクレジットの発行、保有、移転、償却、取消等を管理しており、日本の
国別登録簿は、2007年3月からクレジットの法人保有口座の開設を受け付け、同年11月から気候変動枠組条約事務局が整備した国際取引ログ(異なる国の国別登録簿を電子的に接続するシステム)に接続している。

クレジットのダブルカウント
ダブルカウントとは、クレジットの購入によって排出量を埋め合わせる場合に、ある一つのクレジットが複数の異なる排出活動を埋め合わせるのに用いられることをいう。
公害問題の改善と温室効果ガスの排出削減といった二つの効果を同時に実現することができる経済成長を続ける途上国等においては、大気汚染、水質汚濁、廃棄物管理等の公害問題が優先順位の高い課題であることが多いが、公害対策の中には温室効果ガスを削減する効果もあるものが多くある。公害対策と温室効果ガス削減といったような二つの効果を同
時に実現できる、いわゆるコベネフィット型の対策・プロジェクトには途上国の関心も高い。このような温暖化対策とのコベネフィットが期待できる分野は、公害対策に限らず、経済社会発展の実現や貧困の削減、自然環境の保全等も含まれる。

国民運動
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等さまざまな主体がそれぞれ地球温暖化対策に取り組むことをいう。京都議定書目標達成計画では横断的施策として「国民運動の
展開」を位置づけており、事業者、国民などの各界各層の理解を促進し、具体的な温暖化防止活動の実践を確実なものにするため、政府は経済界、NPO、労働界、研究者等と連携しつつ、知識の普及や国民運動の展開を図ることとしている。

自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)
自主的に温室効果ガスの削減目標を立てて排出削減を行う企業を対象として、試行的な国内排出量取引を実施する制度。環境省が2005年度から開始。具体的には、自ら定めた温室効果ガスの排出削減目標を達成しようとする企業に対して、補助金を交付することにより経済的インセンティブを与えるとともに、当該企業が自らの排出削
減だけでなく排出枠の取引を活用することにより削減目標を達成することができるというもの。

自分ごと
地球温暖化問題は自らの行動に起因して起こる問題であると認識するとともに、地球温暖化防止対策が進まなかった場合に世界に起こる事態を我がこととして捉えることをいう。市民一人一人のライフスタイル・ワークスタイルの不断の見直しを促すためには、温室効果ガス削減を自分のこととして意識することが重要である。

償却
京都メカニズムクレジットを国別登録簿上の償却口座へ移転することをいう。日本を含む京都議定書附属書Ⅰ国が京都議定書に基づく削減目標を達成したかどうかは、実際の第一約束期間中(2008年〜2012年)の排出量と償却口座内のクレジット量の比較により判断される。

低炭素化
ライフスタイルの見直しや事業活動の変更等により、生活や事業活動から発生する温室効果ガスの排出を少なくすることをいう。低炭素社会化石エネルギー消費等に伴う温室効果ガスの排出を大幅に削減し、世界全体の排出量を自然界の吸収量と同等のレベルとしていくことにより、気候に悪影響を及ぼさない水準で大気中温室効果ガス濃度を安定化させると同時に、生活の豊かさを実感できる社会をいう。

二重記録
京都メカニズムクレジットは、京都議定書及びその関連規定に基づき、1トンごとに異なる番号を付されて管理されている。二重記録とは、同一番号の京都メカニズムクレジットが同時に異なる口座に記録されてしまうことをいう。

第4次評価報告書
IPCCは、定期的に温室効果ガスによる気候変動の見通し、自然、社会経済への影響評価及び対策の評価を実施している。第4次評価報告書は三つの作業部会報告書と統合報告書から構成されている。2003年に各作業部会の報告書骨子案を検討し、2004年に執筆者・査読者等を選択し執筆を開始した。その後複数回にわたるドラフトの査読者及び政府によるレビューを経て2007年2月から順次作業部会報告書が公表され、11月17日に統合報告書が公表された。この統合報告書を含む一連のIPCC 第4次評価報告書は、第2約束期間以降の国際的枠組交渉のスタートラインとなる重要な基礎資料であり、統合報告書の主要な結論は以下の通りである。
1.気候システムの温暖化には疑う余地がなく、大気や海洋の全球平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。
2.人間活動により、現在の温室効果ガス濃度は産業革命以前の水準を大きく超えており、20 世紀半ば以降に観測された全球平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い。
3.現在の政策を継続した場合、世界の温室効果ガス排出量は今後二、三十年増加し続け、その結果、21 世紀には20 世紀に観測されたものより大規模な温暖化がもたらされると予測される。
4.気候変化に対する脆弱性を低減させるには、現在より強力な適応策が必要である。適切な緩和策の実施により、今後数十年にわたり、世界の温室効果ガス排出量の伸びを相殺、削減できる。
5.適応策と緩和策は、どちらか一方では不十分で、互いに補完しあうことで、気候変化のリスクをかなり低減することが可能。既存技術及び今後数十年で実用化される技術により温室効果ガス濃度の安定化は可能である。今後20〜30 年間の緩和努力と投資が鍵となる。

排出削減・吸収の確実性・永続性
商品、サービス、イベント、自己活動等からの排出量が確実に埋め合わされていることを担保するためには、排出削減・吸収プロジェクトにより確実な排出削減・吸収があり、かつこの排出削減・吸収が将来にわたって永続的であることが必要となる。例えば、植林プロジェクトによる温室効果ガス吸収量でオフセットすることとしても、実際に植栽された樹木が管理不足で枯死してしまった場合には、想定していた吸収量は発生しない排出削減・吸収量が正確ことになるに算定される商品、サービス、イベント、自己活動等からの排出量がクレジットの購入や排出削減活動の実施等によって確実に埋め合わされていることを担保するためには、1t-CO2eのクレジットや排出削減が実際の1トンの温室効果ガスの削減・吸収に裏打ちされている必要がある。

無効化
オフセットで使用したクレジットが再販売・再使用されることを防ぐために、無効にすること。例えば、京都メカニズムクレジットの場合、国別登録簿上の償却口座又は取消口座に移転すると再度それらの口座から持ち出すことはできないため、無効化されることになる。

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)
気候変動に関する政府間パネル。地球温暖化問題に関する科学的、技術的、社会経済的な知見について各国の研究者が議論するため、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設置された機関。IPCC は、これまで三回にわたり評価報告書を発表してきた。これらの報告書は、世界の専門家や政府の精査を受けて作成さ
れたもので、「気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)」をはじめとする、地球温暖化に対する国際的な取組に科学的根拠を与えるものとして極めて重要な役割を果たしてきた。

VER(Verified Emission Reduction)
京都議定書、EU域内排出量取引制度等の法的拘束力をもった制度に基づいて発行されるクレジット以外の、温室効果ガスの削減・吸収プロジェクトによる削減・吸収量を表すクレジット。このVERについて、いくつかの民間団体が独自の認証基準を有している。

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